ネット資本主義の企業戦略 ついに始まったビジネス・デコンストラクション
出版社 : ダイヤモンド社 出版日 : 1999/11 |
第1章 不吉な前例
長い歴史をもつ百科事典の老舗ブリタニカは、マイクロソフトのエンサイクロペディアにしてやられた。しかしながら、エンサイクロペディアもまた利益を上げていないのだ。
第2章 「情報」と「モノ」の流れが分離されると…
競争優位や収益性を生み出していたのは実は情報だった。その情報が「モノ」から離れて、独自の経済原理によって動き始めた。
「モノ」の経済原理と「情報」の経済原理は全く異なる。
第3章 情報の「リッチネス」と「リーチ」は二者択一か
「リッチネス」は濃度とか密度、具体的には顧客との関係の深さ、正確さ、速度、新しさ、カスタマイズ性、双方向性、関連性、セキュリティ、「リーチ」は到達距離、具体的には顧客の数とか、地域、国、人種、年代などにおける幅広さ。おそらくは日本語にはない概念で訳しにくかったと思われる。
それらは今まで矛盾する概念であり、双方のバランスをとることで、同じ業種の中ですみわけが行われてきた。
現在はそのトレードオフがなくなる。すなわち矛盾せずに両立することが可能になりつつある。
第4章 デコンストラクションとは何か
「モノ」の経済原理から「情報」の経済原理を中心とする。たとえば新聞業界であり、自動車業界である。
既存企業の競争優位は失うものがない新規参入組みにおびやかされることになる。
選択肢が飛躍的に増えることにより情報の案内人としてのナビゲーターが出現する。
第5章 ディスインターミディエーション(中間業者の排除)
第6章 リーチをめぐる競争
階層的なメニューを選択して必要なものを選び出すのは、あるところから不可能になる。
無限に広がる選択肢の中から消費者が必要とする情報を提供するのは、生産者かそれとも中立的なナビゲーターか。
クリティカルマス(最低限の顧客数)を獲得しないとナビゲーターは役に立たない。
第7章 アフィリエーションをめぐる競争
アフィリエーションとはたとえ生産者には不利な情報であっても消費者には提供するということ。
今までナビゲーターは生産者寄りの立場をとっていたが、今後はどれほど消費者側によっていくことができるかを競争することになるだろう。
第8章 リッチネスをめぐる競争
顧客との距離を縮めるための競争。クッキーを使って顧客の行動を分析するということと、プライバシーのトレードオフ。ライバルは常に追随してくる。その位置から落ちたくなかったら全力で走れ。
ソニー製品に対する「信仰」とコカコーラに対する「体験」それぞれのブランドの違い。
第9章 サプライチェーンのデコンストラクション
ANXにより結び付けられた自動車業界。統一した規格に基づく部品の調達。
金融はOFX
電力はOASIS
小売業界はCPFR
医療はHL7/KONA
第10章 組織のデコンストラクション
日本企業。リッチネスは高くリーチは狭い。間仕切りもない部屋に管理職から新入社員まで押し込められる。
資本と同様にリスク負担や経営も市場取引される?
雇用の流動性。報酬パターンの非平準化。
ハリウッドではタレントや監督にエージェントかついた。プロスポーツも同じ。
現時点では最高の状態にあるシリコンバーレーの雇用形態。
- 流動性 固定的な部署に変わってチーム制
- 水平性 ピラミッド型組織の階層削減
- 信頼性 情報の非対称性の解消。評判リスクが大きくなる
オブジェクト指向の組織
第11章 今、何をやるべきか
戦略再考の指針
- 現時点で業界をリードする存在であっても2,3年後はわからない。
- デコンストラクションの波に襲われる可能性が最も高いのは、既存企業にとってもっともダメージが大きく、また既存企業がそのタメージを認めたがらない部分
- デコンストラクション成立を待っているということは、ライバルがほしがっている最高の競争優位すなわち時間をあけわたすということ。
- リーダーは可能性のあるデコンストラクションのパターンすべてに取り組む必要がある。
- 戦略が非常に重要
- 勝利の価値が増大し負けた場合の犠牲もまた増大する
- 再構築した事業定義が従来のものと一致することはめったにない
- 既存の組織にとって何よりも厄介なのはこれまでとは違うデコンストラクション後を見通した視点で事業を捉え、それによって得られた洞察の元で行動するということである。
- 見落としやすい落とし穴として、自衛本能で固まり、出コンストラクションに懐疑的な身内の組織による何もしないことによる消極的な抵抗。
- デコンストラクションの進む世界において戦略は大筋で正しくなければならないが、組織そのものに失敗から学ぶ能力があるのなら具体的な市細部での正しさを目指す必要はない。
- 新しい事業に対して組織や慣習あるいは個人的なレベルで旧来のものを持ち込もうとするせいで既存企業が持つもっとも重要な資産の価値が損なわれている場合が非常に多い。
- 既存企業はその気になれば新興企業になりうる